包丁もスクラップ&ビルドの時代へ

― 廃盤になる包丁、残すべき包丁 ―

本日、金沢の和菓子屋さんが**「ようかん切包丁」**の研ぎ直しを依頼されました。

ようかん切包丁はあまり目にすることのない特殊な包丁ですが、和菓子業界では今も根強く使われている道具です。

最近では錆びにくいステンレス製が主流になっていますが、今回持ち込まれたのはしっかりと鍛造された打刃物のようかん切包丁。職人技が感じられる逸品でした。

「ようかん切包丁」はなぜ欠けるのか?

ようかんは柔らかく、刃を傷めるような食材ではありません。

しかし、実際には包丁が番重(ばんじゅう)やシンクに当たって刃が欠けてしまうケースが多いとのこと。用途のわりに使用環境が過酷なのです。

和菓子の中で生き残る「ようかん」

洋菓子の人気に押される中、和菓子業界も需要の減少に苦しんでいます。

それでも「ようかん」はまだまだ需要があり、ようかん切包丁も継続して売れている商品です。

このような包丁は、メーカー側にとっても採算が取れるアイテムと言えます。

同様に「カステラナイフ」や「パン切り包丁」なども一定の需要があり、作り続ける価値のある商品です。

採算が合わず、消えていく包丁たち

一方で、採算が取れず廃盤になってしまう包丁も少なくありません。

例えば「モナカの種切り包丁」。

これは最中(もなか)の皮の生地を焼く前に切るための特殊な包丁です。

需要が非常に少なく、包丁としてもマイナーな存在です。

そのため、若い職人たちは製作を敬遠し、作り手はどんどん減少しています。

かつて作っていた職人は高齢化や廃業で引退。後継者がいても「利益にならないものは作らない」というのが現実です。

消えゆく特殊包丁の一例

以下は、近年廃盤となった包丁・道具の一部です:

  • 芋切り包丁
  • 江戸型菜切包丁
  • とうふ平刃包丁
  • 飴切ナタ
  • カステラ包丁(480mmの長刃)
  • ピンキング鋏
  • 握り鋏(150mm)

これらを必要とする人は今も確かにいます。しかし、メーカーや職人が採算を取れない以上、量産は困難です。

入手したいなら「特注」という選択肢

どうしても欲しいという方は、特注で職人に製作を依頼するしかありません。

ただし、製作費は高額になる上、技術の途絶えた包丁はもう再現できないこともあります。

最後に:合理化と伝統のバランスを

今後も、採算が合わないという理由で、包丁や道具の廃盤は続くでしょう。

しかし、ごく一部のニーズに応えるのも、老舗メーカーや伝統職人の責務ではないでしょうか。

合理化の名のもとに切り捨てられた商品たち。

それを今も使いたい人たちの想いに、誰かが応える道が残っていてほしいと願っています。

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